理事長　藤井義英（ふじいぎえい）

　この度、ご縁があってアジア仏教徒協会の理事長に就任することになりました。

　振り返ってみますと、今から25年前のことです。当時、私は宗教専門紙・中外日報社（本社・京都市）に勤務し、インドをはじめアジア各地の仏蹟巡拝や交流の仕事をしていました。そんな中、初めてミャンマーを訪れた感想は、どんな国よりも「慈しみと微笑みを育む文化のある国」という印象でした。当時のミャンマーはまだ、民主化は進んでおらず、軍事政権下で政治的にも経済的にも厳しい状況にありました。しかし、そこで生活する人々に接するとなんとも懐かしい素朴で心豊かな慈しみの心を肌で感じることができました。それが、日頃の生活の中で実践する僧俗を問わない敬虔な仏教徒にあることを知りました。そんな中で出会ったのが、アジア仏教徒協会の方々でした。

　「誰の思いからも薄れていく戦争。そのかたわらで、死者（戦争犠牲者）は何かを語りたいに違いない」。こんな僧らの戦争犠牲者への慰霊追悼と平和への願いが実を結び、35年前の11月11日、現地サンガとの〝共働〟作業によって世界平和パゴダがつくられ、アジア仏教徒協会が設立されました。以来、ミャンマーにおけるこの過去の“いのち”へのこだわりが未来への“いのち”へのこだわりとなって、浄水器の設置、医療、教育などの支援プロジェクトとして活動を展開。また、韓国曹渓宗外郭団体・パーラミータ青少年協会と連携してアジアの未来を担うグローバルリーダーを育てるための青少年相互交流が行われてきました。

　今、日本をはじめ世界で失われているのは、自他共に「慈しみと微笑みの心」ではないでしょうか。アジア仏教徒協会設立の原点に立ち返り、過去と未来の〝いのち〟にこだわり「慈しみと微笑みを育む」ことのできる活動を目指し、朋の輪を広げていきたいと思います。皆さまのご指導、ご協力をお願いし、あいさつとさせていただきます。